肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症は、最近では静脈血栓塞栓症と総称されるようになってきた。特に重症例においては、迅速で的確な診断と治療が不可欠である。急性期死亡率が極めて高いからである。本研究の目的は、重症静脈血栓塞栓症に対する血栓溶解・破砕・吸引療法を統合した新しいハイブリッドIVR治療システムを開発し、基礎的研究を行うことにより、そのシステムの安全性を高め、最終的には、治療成績を向上させることにあった。 平成18年度・平成19年度では、基礎的研究・動物実験により、重症静脈血栓塞栓症に対するハイブリッドIVR治療に最も適したシース/カテーテルシステムを決定しえた。そこで、臨床応用を開始することとした。ここまでの経緯について、その都度まとめ、欧州放射線会議ECRを初めとする研究発表と雑誌論文執筆をおこなった。 平成20年度は、更に臨床応用を推進した。また、得られた成果については詳細に検討し、研究発表・雑誌論文執筆・図書執筆を行うことができた。特筆すべきは、手技に伴う肺動脈内血栓塞栓子の遠隔塞栓が、肺動脈圧の上昇を来たすことを初めて明らかにしたことである。厳密な統計処理を行ったこともあり、幸い“Britsish Joumal of Radiology"にその研究成果を掲載させることができた。手技中の肺動脈圧を持続的にモニターすることにより、手技に伴う遠隔塞栓が予知可能となったため、本手技の安全性を一歩高めた論文であると自負している。
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