本研究は、最小限の副作用で最大限の治療効果が期待できる非侵襲的閉鎖循環下抗がん剤灌流療法の開発および治療システムの完成を目的として行った。難治性肝がんに対する治療法は過去の方法および研究成果から問題点であった循環動態の安定を保つために、門脈血を効率よく全身系へ戻す工夫として門脈内にシースを2本挿入した門脈内2ルート法を開発した。ブタ5匹(体重40kg)に対しIVRの技術のみを用いた肝灌流療法は治療中の循環動態の安定を維持し、治療後の臓器障害も病理学的に評価した結果、肝・腎には有意な障害は見られず、懸念された小腸浮腫も認められなかった。これにより肝灌流療法の開発は成功したと考えられる。今後はさらなる安全性の確立とともに臨床試験に向けた準備を進めたいと考えている。また、灌流療法を基礎とした巨大腎がんに対する治療法の臨床データの分析・評価が終了し、その成果はEuropean Radiology誌に掲載されることになった。これは腎閉鎖循環下エタノール塞栓術であり、世界で初めて報告される我々が開発した治療法である。巨大腎がんに対し大量のエタノールを用いても全身へのエタノールの漏出はほとんどなく腎がんに劇的な抗腫瘍効果を有する方法で著明な予後の改善が認められている。さらに、灌流療法を基礎とした治療法の開発は骨盤内腫瘍(抗癌剤灌流装置の制御方法:特許取得登録4024506)を始め、膵がんにも及び膵に対する灌流療法も開発中である。これらの治療法は世界に先駆けて我々が開発・開発中の治療法である
|