癌治療法の一つである放射線治療では低酸素状態の腫瘍細胞は放射線に対する感受性が低くなり、固形癌、特に、肺癌、頭頚部癌及び子宮頚癌において十分な治療効果が得られない。固形腫瘍における低酸素領域の機能を把握し、放射線治療の治療方針を決定するためのPET薬剤である^<64>Cu-ATSMと^<18>F-FMISOに関する研究を行ってきた。 ^<64>Cu-ATSMについては注射剤として製剤化するためには可溶化剤を用いる必要があり、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、可溶化だけではなく製剤の安定性を向上させることが明らかになった。また、Cu-ATSM/2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン溶液と2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン溶液のラットによる単回投与毒性試験を実施し、両者とも臨床最大投与量の100倍と200倍において薬剤による毒性は検出されなかった。以上のことから、可溶化した^<64>Cu-ATSMの臨床応用の基盤ができた。 また、^<18>F-FMISOについては、住友重機械工業社製の多目的合成装置を用いた製造方法を確立し、ベンジルアルコールを安定化剤とした製剤化を完成させた。現在、財)先端医療振興財団において固形癌の放射線治療と合わせたPETイメージングデータが数多く収集され、その有用性を評価されているところである。
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