研究概要 |
特定の遺伝子発現を選択的に抑制するRNA干渉法(SiRNA)を用いて遺伝子の発現抑制と放射線照射の併用による新しい治療法の可能性について基礎的な検討を行った。 1.細胞レベルにおける効果:ヒト線維芽細胞AG1522およびヒト腺癌細胞HeLaS2,ヒト骨肉種細胞MG63を実験に使用した。GIAGEN社製のATMsiRNA(S100299299)およびHiPerFectReagent(301704)を用いて12nMのATMsiRNAを作製した。照射はX線を用い,2〜6Gyの照射を実施した。照射に先立ち,上記のHVJEncelopeベクターを細胞に導入し,放射線の増感効果を細胞の生存率曲線から経時的に検討した。その結果,HeLaS2細胞においてベクター導入後24〜48時間後に明らかな放射線増感効果認められた。 2.マウス移植腫瘍に対する効果:ヌードマウス(BALB/c nu/nu♂6週齢)の右大腿部皮下に細胞レベルにおいて放射線増感効果が認められたHeLa細胞を移植し,腫瘍の長径が5mmに成長した時点で実験を開始した。腫瘍に対するATMsiRNA導入は腫瘍に直接12nM ATMsiRNA(100ul)を注入した。注入は照射の24時間前(初回)および2回目の照射直後(3回目照射24時間目)の計2回実施した。照射は,X線発生装置を用いて管電流20mA,管電圧150kV(線量率2.05Gy/分)の条件で連日5日間(4Gy/日),計20Gyの照射を行った。その結果,非照射マウスの移植腫瘍は移植後3週目から急な増殖がみられたが,照射単独およびsiRNA導入+照射マウスでは照射終了後7〜104間に腫瘍の増殖傾向はみられなかった。siRNA導入+照射マウスでは照射後14日前後で腫瘍の縮小傾向がみられた。実験開始後21日目の腫瘍体積増加比は,非照射マウスで約6.5倍,照射単独マウスで約4.5倍およびsiRNA導入+照射マウスで約3.0倍であった。これらの結果から,さらに腫瘍細胞によるベクター導入に関する検討を行い,ATM遺伝子制御と放射線の相乗効果を期待した遺伝子制御放射線増感療法の開発に寄与で得ると考えられた。
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