硼素中性子捕捉療法の悪性胸膜腫中皮腫に対しての、新規治療法の開発において必要となる悪性胸膜中皮腫モデルマウスの作成は、ヌードマウスにヒト悪性胸膜中皮腫細胞MSTO-211H細胞を同所性に胸腔内に移植することにより成功した。腫瘍の生着率を検討したところ、移植した13匹、全マウスに腫瘍が認められた。平均生存期間は32日であり、約40日で全マウス死亡した。 この悪性胸膜中皮腫モデルマウスを使用して、硼素中性子捕捉療法の臨床試験で使用されている硼素化合物であるboronophynyl alanineを用いて、薬理動態の検討と、治療実験を現在施行中である。薬理動態の検討の1つとして、固定粒子線飛跡解析として、CR-39フィルムによるNeutron capture radiographyの手法で、硼素化合物のBPAを腹腔内投与した場合の腫瘍と周囲の正常組織との硼素化合物の集積比を評価した。その結果、腫瘍に対して周囲の心臓、肝臓より高濃度にBPAが集積し、高密度に粒子線が照射されることを確認した。 マウス正常肺の硼素中性子捕捉療法による影響に関して、晩期の有害事象として肺線維化を指標として検討した。非処置対照群、ガンマ線照射群、中性子照射群、硼素中性子捕捉療法群の4群にわけて、処置6ヶ月後の肺組織の線維化を病理組織学的に検討した。硼素中性子捕捉療法群では、対照群、ガンマ線照射群と比較して肺の線維化が優位に増強している所見は認められなかった。
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