研究概要 |
平成19年度は、平成18年度に作成した悪性胸膜中皮腫モデルマウス(ヒト悪性胸膜中皮腫細胞MSTO-211H細胞を胸腔内に同所性移植することにより作成)を使用し、薬理動態の検討と、治療実験を施行した。薬理動態の検討として、悪性胸膜中皮腫マウスに臨床試験で使用されているボロノフェニルアラニン(Boronophenylalanine;BPA)を350 mg/kgの用量で腹腔内投与し、2時間後の腫瘍/肺の硼素濃度比を測定した。次に、臨床においては、腹側,背側からの2門照射が必要なため、5時間間隔でBPA(350mg/kg)を2回投与し、2回目の投与後2時間後の腫瘍/肺の硼素濃度比を検討した。それぞれの集積比は、2.2±0.8、2.4±0.4であった。硼素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy;BNCT)の治療実験は、悪性胸膜中皮腫マウスを非照射対照群、中性子照射群、BNCT群の3群にわけ、各処置12日後に犠牲死させ、腫瘍の重量を測定・比較することにより治療効果を検討した。BNCT群の治療方法は、薬理動態の検討と同じスケジュール・投与量(5h間隔、BPA 350 mg/kg2回投与)でBPAを投与し、各投与2時間後に腹側と背側の2門照射でそれぞれ熱中性子線を1時間照射した。各群の腫瘍重量は、対象群が、359.4±227.9mg,中性子照射群が214.8±95.6mg,BNCT群が71.3±40.9mgと、BNCT群に腫瘍縮小の明らかな治療効果を認めた。 平成18年度に明らかにしたマウス正常肺にBNCTが重篤な肺線維化を示さない結果と本年度の治療効果の確認と併せて、悪性胸膜中皮腫に対するBNCTは有望な治療方法になり得る可能性があることが確認された。
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