研究課題/領域番号 |
18591380
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増永 慎一郎 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (80238914)
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研究分担者 |
櫻井 良憲 札幌医科大学, 医学部, 講師 (20273534)
田野 恵三 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00183468)
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キーワード | 休止期腫瘍細胞 / 潜在的致死的障害からの回復 / 線量率効果 / 非相同末端結合 / 低温度温熱処置 / 高LET放射線 / 原子炉中性子線照射 / 加速炭素イオン線照射 |
研究概要 |
照射線量率を変化させた際の所見として、とりわけp53-wild type腫瘍の固形腫瘍内休止期(Q)細胞に顕著に認められる、高線量率照射後の潜在的致死的障害からの回復(PLDR)、及び、照射線量率低下による放射線感受性の低下が、DNA二重鎖切断の非相同末端結合(NHEJ)を阻止するとされるwortmannin処置の併用によって効率よく押さえられ、低温度温熱処置(MTH)の併用も同様にかなり効率よく抑えた。これらの抑制効果はQ腫瘍細胞で顕著であり、NHEJや相同組み換えによるDNA二重鎖切断の修復がPLDRや照射線量率低下による放射線感受性の低下の原因と考えられているので、薬剤と比べるとほぼ毒性のないMTHは、放射線抵抗性Q腫瘍細胞を含めた腫瘍全体の制御から見ても、かなり有効なDNA二重鎖切断修復阻止処置の一つであろうと考えられた。 高LET放射線を用いた際の所見に関しては、γ線照射下で認められるQ腫瘍細胞と腫瘍内全腫瘍細胞間の感受性の大きな差は原子炉中性子線照射または加速炭素イオン線、特に高LETを有する炭素イオン線照射によって顕著に縮小され、γ線照射下においてQ腫瘍細胞に顕著に認められるPLDRや照射線量率低下による感受性の低下は、加速炭素イオン線、特に高LETを有する炭素イオン線照射によって効率的に押さえられた。減弱線量率照射下では、高LETの加速炭素イオン線照射に対する感受性は、原子炉中性子線照射下とほぼ同様であった。従って、Q細胞をも含んだ腫瘍全体としての制御効果から見て、加速炭素イオン線、特に高LETを有する炭素イオン線照射、及び原子炉中性子線照射は、腫瘍内不均一性に起因する腫瘍細胞の不均一な感受性の抑制に非常に有効である事が確認された。今後は固形腫瘍部のみで殺細胞効果を有する物質に変換され正常組織では無毒な薬剤のQ腫瘍細胞への効果も加味した評価なども計画している。
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