研究概要 |
非小細胞肺癌の生物学的特性を解明する目的で、剖検例6症例の治療前後の病理標本を用いて細胞不均一性heterogeneityと後天性ゲフィチニブ耐性との関連可能性について検討した。方法は、治療前の生検・切除材料ならびに剖検時に認められた数箇所の腫瘍病巣におけるEGFRのexons 18〜21のmutationの有無を検索した。その結果、治療経過でゲフィチニブの効果が認められた症例では、治療前には、exon 19にL747-T751欠損のみられる症例、exon 21にL861Qのmutationがみられる症例が認められたが、剖検時の標本ではいずれのmutationも検出されなかった。このことから、非小細胞肺癌では、ゲフィチニブが有効な症例でも、治療経過とともに野生型EGFRをもった細胞が生き残り、ゲフィチニブ抵抗性となることが推測され、腫瘍細胞にはheterogeneityがあることが推定された。 一方、Lewis肺癌(C57/BL6マウス)を用いて,血管新生阻害剤の一つであるAT1受容体阻害薬TCV-116の放射線増感作用についての実験を行った.方法は,実験群を、無処置群、TCV-116投与群、照射単独群(10Gy)、照射+TCV-116併用群に分けて腫瘍径の経時的変化と組織学的所見を観察した。その結果、併用群では他の3群に比し有意に腫瘍増殖抑制効果がみられ、組織学的にも腫瘍周囲の微小血管密度ならびに血管新生領域の有意な減少が認められた。これらの併用群での効果は、TCV-116投与単独群、照射単独群でのそれぞれの効果よりも著しく,相乗効果を示すことが確認された。
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