研究概要 |
Lewis肺癌(C57/BL6マウス)を用いて,血管新生阻害剤の一つであるAT1受容体阻害薬TCV-116の放射線増感作用についての実験を行った.実験方法は,雄性C57BL/6マウスにLewis肺がん細胞を接種し,マウスを(1)無治療群,(2)AT1受容体拮抗薬投与群(カンダサルタン,30 mg/kg/day,経口),(3)放射線治療群(10Gy,1回照射),(4)併用療法群の4グループに分け,抗腫瘍効果と抗血管新生作用の評価を行なった。この結果,薬剤単独,放射線治療単独群と比較して,併用療法群では腫瘍縮小効果が著しく,血管内皮マーカーCD31の発現量も併用により著しく減少し,免疫組織化学染色でもCD31陽性の新生血管生成が併用療法群で強く抑制された。また腫瘍周囲ストローマ組織でのvascular endothelial growth factor(VEGF)の発現量は併用により著しく減少しており,腫瘍ストローマ領域におけるVEGFの産生抑制が,併用効果が顕著となる一因と考えられた。 非小細胞肺癌剖検例の治療前後の病理標本を用いて細胞不均一性heterogeneityと後天性ゲフィチニブ耐性との関連可能性について検討した。治療前の生検・切除材料ならびに剖検時に認められた数箇所の腫瘍病巣におけるEGFRのexons18〜21のmutationの有無を検索したところ,治療経過でゲフィチニブの効果が認められた症例では,治療前には,exon19にL747-T751欠損のみられる症例,exon21にL861Qのmutationがみられる症例が認められたが、剖検時の標本ではいずれのmutationも検出されなかった。このことから、非小細胞肺癌では、ゲフィチニブが有効な症例でも,治療経過とともに野生型EGFRをもった細胞が生き残り,ゲフィチニブ抵抗性となることが推測され、腫瘍細胞にはheterogeneityがあることが推定された。
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