研究分担者 |
松下 一之 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90344994)
島田 英昭 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (20292691)
須永 雅彦 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10361437)
朝長 毅 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (80227644)
西森 孝典 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30401003)
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研究概要 |
【背景・目的】大腸癌ではc-myc遺伝子の転写抑制因子FIR(Far UpStream Element-Binding Protein Interacting Repressor)のアミノ末端(exon2)を欠損したスプライシングバリアント(以下FIRΔexon2)が発現し,正常型FIRの機能を拮抗阻害することにより癌化に関与していると考えられる。本研究では,FIRΔexon2あるいはスプライシング機序自体をコントロールすることが癌の新しい治療法のターゲットとなりうるか調べ,exon2近傍にあるントロンの繰り返し配列がFIRのスプライシングに関与するか検討した。【材料と方法】食道癌,大腸癌の癌,非癌部からゲノムDNA,蛋白質およびtotal RNAをそれぞれ抽出しウエスタンブロット,RT-PCR法によりFIRの発現を調べ,癌特異的FIRΔexon2をDNAシークエンスにより配列を決定したところ,癌で多くスプライシングを受けるのはエクソン2であることを特定した。【結果】食道癌,大腸癌で癌特異的にFIRの機能部位であるアミノ末端を欠損したFIRΔexon2が高頻度に発現していた。このFIRΔexon2はFIRと競合的に働きc-Myc発現増大とアポトーシス誘導阻害を惹起しFlRと拮抗的に作用することが示された。エクソン2の前後のイントロン配列をDNAシークエンスしたところ4塩基の繰り返し配列が認められた。本研究の検討ではイントロン中の4塩基の繰り返し配列がFIRのスプライシングに関与していることが示唆された。一方FIRΔexon2は担癌患者末梢血由来cDNAのみに検出され,健常者では検出されなかった。さらに大腸癌摘出前後のFIRとFIRΔexon2の発現量の比をreal-time PCRで正確に定量、比較したところ,癌摘出後でFIRΔexon2/FIR比が有意に低下しており,大腸癌の新しい血液を用いた診断法として期待できる。
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