研究概要 |
【背景】 終末期肝疾患患者の生命を救うことが出来る唯一の治療法として確立された生体肝移植医療において、移植後胆道合併症(胆汁漏および胆管狭窄)は24-32%と高頻度に発生し、且つ長期にわたり患者のQOLを悪化させるため最も大きな問題となっている。我々は、内視鏡治療を試みた生体肝移植後胆管吻合部狭搾患者の約半数で狭窄部より十二指腸乳頭側の総胆管が通常より拡張していることに気がついた。そこで、吻合部狭搾の原因として、生体肝移植術中に胆嚢および胆管を切断することにより乳頭括約筋を弛緩させる神経が切断された結果、乳頭括約筋機能不全が胆管内圧を上昇させ、吻合部胆管がより強い虚血状態に陥り高頻度に吻合部狭搾が発生すると仮定した。 【目的】 よって、本研究では(1)胆嚢摘出術および肝切除術がどの程度十二指腸乳頭機能に影響を与えることと、(2)生体肝移植術後の十二指腸乳頭機能不全が吻合部胆道狭搾にどの程度影響を及ぼすかを検討することを目的とする。 【平成18年度の結果】 平成19年2月に下記の内容で京都大学医学部倫理委員会の承認を得たので、移植・肝胆膵外科の協力の下に術中乳頭圧測定を行う予定としている。 【術中十二指腸乳頭圧の測定】 (1)通常の胆嚢摘出術および肝切除術が十二指腸乳頭圧に及ぼす影響の検討 (ア)胆嚢摘出術,(イ)肝右葉切除術,(ウ)肝左葉切除術において胆嚢管、右肝管、左肝管のそれぞれの切除術により十二指腸乳頭内圧の変化を各々10例ずつ検討を行う。特に通常の胆嚢摘出術は、転移性肝癌など肝部分切除術が行われる際に十二指腸内圧測定を行うこととする。 (2)生体肝移植術(肝全摘術)が十二指腸乳頭圧に及ぼす影響の検討より、胆嚢摘出術から肝切除術による十二指腸乳頭圧に及ぼす影響に関して検討を行い、生体肝移植後胆管合併症に及ぼす影響に関して検討を行う
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