(1)マウスES細胞に対する転写因子発現制御系の確立 胚様体内部には非特異的初期分化誘導が惹起されることから、マウスES細胞から胚様体を作製した上で、胚様体構成細胞からmRNAを回収しcDNAを作製した。作製したcDNAよりPCR法を用いて中内胚葉系転写因子であるMixおよびHexのOpen Reading Frameをクローニングし、これをTet-ON systemを利用して発現制御するプラスミドを構築した。本プラスミドにおいては、転写因子配列の下流にIRES(internal ribosomal entry site)をはさんでGFP(green fluorescent protein)配列を組み込むことで、目的転写因子発現細胞をGFP発現細胞として認識できるように設計した。これをマウスES細胞に遺伝子導入した後、獲得したトランスジェニックES細胞株に対し、Doxycycline(Dox)添加によるEGFP発現細胞の出現を蛍光顕微鏡により確認した。GFP発現細胞を蛍光励起セルソーターにより分離回収し、GFP発現細胞群および非発現細胞群における転写因子発現をRT-PCRや免疫染色法にて確認した。 (2)マウスES細胞から肝細胞への分化誘導 上記の転写因子発現制御系を用いて、マウスES細胞から誘導されるEGFP陽性細胞を蛍光励起セルソーターにより分離回収した。現在、分離した細胞に対し、これまで内胚葉細胞の発生分化に関わることが報告されているFGF、EGF、HGFなどの増殖因子の添加や細胞外マトリックスの組み合わせによる培養を行っている。現在、分化誘導中に経時的にRT-PCRを行い、中胚葉系細胞マーカー(Lim1、Gsc、T、Cerberus、Nodal、Shh、CD34、Flk1など)および内胚葉細胞マーカー(AFP、Albumin、GATA4、HNF3β、Sox17など)発現を検証中である。
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