研究課題/領域番号 |
18591411
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
酒井 哲也 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助手 (80372647)
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研究分担者 |
黒田 嘉和 神戸大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70178143)
松本 逸平 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (30379408)
辻村 敏明 神戸大学, 大学院医学系研究科, COE研究員 (30403249)
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キーワード | 移植外科学 / 膵島移植 / PFC |
研究概要 |
臨床膵島移植において門脈内に移植された膵島は移植後早期の生着時にその約50-75%がgraft lossすると言われている。これが1人の重症糖尿病患者をインスリン注射から離脱させるのに複数回の移植を必要とする大きな要因の1つとなっており、ドナー不足に拍車をかけている。この膵島生着における重要な障害因子の1つに移植直後の膵島の低酸素状態がある。移植された膵島は臓器移植と異なり血行再建を伴わないため、移植された膵島に血管新生が始まる移植後2日間は門脈血からのdirect diffusionによってしか酸素が供給されない。一方、我々はこれまで臓器保存中に酸素を供給できる方法として高酸素溶解能を持つPerfluorochemical(PFC)を用いた報告を数多く行ってきた。今回、このPFCを膵島移植時に腹腔内に注入することで、門脈内酸素飽和度を上昇させ、移植膵島の生着改善が可能かどうかを検討した。 まず、予備実験としてルイスラットをウレタンで麻酔し、酸素化したPFCを投与することで門脈血中酸素濃度が有意に上昇することを確認した。また、同系ラットの門脈内に膵島を移植し、移植後血糖の推移を調べることで、1500IEQをmarginal massと決定した。この1500IEQを同様に同系ラット門脈内に移植し、移植時に100%酸素で1時間酸素化したPFCを腹腔内に注入し、以後6時間毎に48時間までPFCを交換した群(1群)と窒素で飽和させることで全く酸素化しないPFCを同様に投与した群(2群)およびPFCを全く投与しないコントロール群とで移植後の血糖推移と移植後28日目のIPGTTの結果を比較した。 結果は2群の移植生着率は1/6とコントロール群(1/6)と同じであったが、1群の移植生着率は5/6と有意な生着改善効果を認めた(pく0.05)。IPGTTでも1群の血糖曲線下面積は2群およびコントロール群に比べ有意に低く、良好なglucose profileを示し(pく0.01)、酸素化PFCの腹腔内投与は、膵島移植の成績を有意に改善することを証明した。
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