虚血性疾患に対する自己骨髄細胞移植による血管新生治療は世界中で臨床試験が行われている。しかし、正常組織と比べ、虚血組織は様々なサイトカインや血管新生関連蛋白の発現が変化しており、細胞移植治療に影響を及ぼすと考えられる。本研究は、虚血急性期と慢性期における組織内環境因子の変化が骨髄細胞の生存・分化、血管新生効果に及ぼす影響を調べることを目的とする。 本年度はin vivoのアプローチによる検討を行った。C57BL/6マウスを用いて左総大腿動脈とその分枝を結紮し、下肢虚血モデルを作成した。モデル作成後24時間後(急性期)、あるいは2週間後(慢性期)に、GFP-Transgenic C57BL/6マウスから採取した骨髄幹細胞を虚血筋肉に直接注入した。移植した骨髄幹細胞(GFP陽性細胞)の生存は、急性期移植群で慢性期移植群よりも高かった(移植14日後;p<0.01)。レーザードップラー法にて血流量を測定した結果、急性期移植群では対照群(PBS投与群)と比較して血流改善効果が認められた(移植14日後;P<0.01)が、慢性期移植群では効果が見られなかった。また、急性期移植群では移植細胞の内皮への分化も認められた。さらに、急性虚血組織中では、慢性虚血組織と比較して、IL-1β、FGF、MCP-1といったサイトカインが上昇していた(p<0.01)。 以上の結果から、虚血組織環境因子は移植細胞の生存・分化や血管新生の治療効果に影響を及ぼすことがわかった。また、細胞移植による血管新生治療は、虚血急性期が最適な時期であることが示唆された。
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