研究概要 |
目的:我々は、TLR4の肝臓における虚血再潅流障害のシグナルをになう受容体としての重要性を検討した。方法:C3H系のTLR-4-deficient typeと、そのcontrol wild typeのマウスを用い、60分の70%肝部分虚血を行った。再潅流後6時間で採血を行い、ALT、IL-6、TNF-alphaを測定した。また、肝組織を用い、western blotting法でTLR-4を介するシグナルの抑制蛋白であるIRAK-M、SOCS-1などのTLR4を介するシグナルの抑制タンパクの発現を調べた。結果:肝温虚血再潅流により、control wild typeのマウスにおいては、ALT値、血中IL-6、TNF-alphaは著しく増加した。deficient typeのマウスでは、それらの増加は有意に減少していた。組織学的にも、deficient typeでは虚血による壊死部が著しく減少していた。組織中におけるTNF-alpha、iNOSのmRNAの発現を検討したところ、deficient typeでは減少していた。NF-kappaB、JNKについてbinding assay, Western blottingで検討したところ、deficient typeではNF-kappaBの活性化、JNKのリン酸化が起こっていることを見出した。次に、肝温虚血再潅流にIRAK-M、SOCS-1などの発現に及ぼす影響を検討したところ、再潅流後1時間でこれらが誘導されることがわかった。まとめ:TLR-4-deficient typeのマウスにおいては、肝温虚血再潅流障害に対して強い耐性があり、これには組織内でのNF-kappaB、JNKの活性化が減弱するためのサイトカイン発現抑制が関与していることが明らかとなった。
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