目的:TLR4の肝臓における虚血再潅流障害のシグナルをになう受容体としての重要性を検討した。昨年度の結果に引き続き、今回はフィードバック機構を検討するため、TLR4をレセプターとするLPSを用いたpreconditioningをモデルとして調べた。 方法:マウス(C57BL6)を用い、90分間の70%肝部分虚血を行った。LPSは1、10、100、1000ug/kgを虚血20時間前に腹腔内投与した。再潅流後6時間のALT値、再潅流後0.5-2時間の肝組織を用い、western blotting法でTLR4を介するシグナル伝達系の構成タンパク、その抑制タンパクおよびその下流に位置するMAP kinaseの一つであるJNKのリン酸化状態を検討した。結果:肝温虚血再潅流により、controlのマウスにおいては、著しいALT値の上昇と肝壊死を認めた。LPS preconditioningは低濃度1、10ug/kg、高濃度1000ug/kgでは肝保護作用を認めなかったものの、100ug/kgのみで有意なALT値の抑制と肝壊死の縮小を認めた。LPS preconditioningにより、抑制タンパクであるSOCS-1の誘導を認め、虚血再潅流後1時間のIRAK-1のリン酸化と、JNKのリン酸化を抑制していた。まとめ:LPSによるlate phase preconditioningは狭い投与量の範囲でのみ、保護作用を示した。LPS投与によりフィードバック機構(TLR4抑制タンパク)が働くことで、TLR4シグナルが抑制されることが示唆された。
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