目的:Toll-like receptor (TLR)は免疫細胞の活性化を行う受容体である。今回、我々は、TLR4の肝臓における虚血再潅流障害のシグナルをになう受容体としての重要性を明らかにする。方法:マウスを用い、60-90分間の70%肝部分虚血を行った。LPSは虚血20時間前に腹腔内投与した。再潅流後の肝組織を用い、western blotting法でTLR4を介するシグナル伝達系の構成タンパク、およびその下流に位置するMAP kinaseの一つであるJNKのリン酸化状態を検討した。結果:肝温虚血再潅流により、LT値、血中IL-6、TNF-alphaは、TLR-4-deficient typeのマウスにおいてはcontrolマウスに比べ、有意に低値を示した。組織学的にも、TLR-4-deficient typeでは虚血による壊死部が著しく減少していた。LPS preconditioningにより、TLR4シグナル抑制タンパクであるSOCS-1の誘導を認め、虚血再潅流後1時間のIRAK-1のリン酸化と、JNKのリン酸化を抑制していた。まとめ:我々の検討において、TLR-4-deficient typeのマウスにおいては、肝温虚血再潅流障害に対して強い耐性があることが示された。LPSによるlate phase preconditioningは狭い投与量の範囲でのみ、保護作用を示した。LPS投与によりフィードバック機構(TLR4抑制タンパク)が働くことで、TLR4シグナルが抑制されることが示唆された。
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