研究課題
基盤研究(C)
現行の小口径人工血管は開存性が不良であり、臨床上の使用は困難である。本研究においては、優れた生体適合性を有し、さらに遠隔期にも良好な開存性を有する小口径人工血管を開発することを目的とする。この人工血管の開発により、種々の血行再建を伴う各種手術手技の臨床成績の向上が期待できるのみならず、患者の自己血管の採取の必要がなくなることより、外科治療上の侵襲の軽減が図れるものと思われる。遠隔期における良好な開存性を獲得するためには、抗血栓性と生体適合性とを両立させることが必要である。すなわち血栓形成・組織増生をもたらすことなく血管内皮を新生させることが必要であり、このために、抗血栓性・抗炎症性の特性を有する内皮を構築した小口径人工血管を開発することを目的としている。平成18年度においては、抗血栓性・生体適合性を評価するため、血管縫合モデルにおいて、組織炎症反応を評価した。その結果、血管壁において異種細胞に対する炎症反応が強いこと、表面の平滑性は炎症反応には変わりはないが細胞侵入に影響すること等が明らかとなった。これらの結果を基に、人工血管の基材として、血管の生体内安全性の確認されたポリグリコール酸(PGA)を用い、ハイブリッド小口径血管の開発を試みた。しかしながら、PGAを礎材として強度を付加した血管組織を作製する予定であったが、現時点では内皮細胞・中皮細胞がPGA多孔質シートの中に入ってゆかず、血管構造を形成できていない。