研究概要 |
我々は、マウス胎児月刊蔵中における幹細胞の分離法を世界で初めて確立した。この基盤研究をもとに、本年度はヒト肝幹細胞の同定と特性解析を目標として研究を推進した。 まず、ヒト肝幹細胞を分離する手段としてFACS(fluorescence activated cell sorting)を実施し、複数の抗体を用いて、ヒト胎児肝細胞をスクリーニングした。その結果、CDX6^+CDY^+CDZ^-という表現型(特許申請準備中のためX,Y,Zと表記)を有した細胞画分にのみ、コロニー形成能を有する細胞が高頻度に存在することを見出した。次に免疫染色によって、CDX^+CDY^+CDZ^-細胞は、肝細胞や胆管細胞に特異的な複数の分子マーカーを発現していることが判明し、即ち肝臓を構成する複数の細胞系列への多分化能を有していることが示唆された。さらにこの細胞は、肝前駆細胞あるいは癌幹細胞で発現している分子マーカーも強く発現していることが半定量RT-PCRで確認された。以上の結果、ヒト胎児肝臓中のCDX^+CDY^+CDZ^-細胞画分には、高い増殖能と多分化能を兼ね備えた肝幹/前駆細胞が限定的かつ高頻度に存在することを示している。続いて、自己複製能に関連するポリコーム群タンパク質であるBmi-1の遺伝子をCDX^+CDY^+CDZ^-細胞に導入すると、コロニー形成能が極めて高くなることを見出した。現在、このBmi-1発現ヒト肝幹細胞クローンを免疫不全マウスへ移植し、過剰な自己複製能を有したヒト肝幹細胞を起点とする癌化過程の再構成について検討中である。 以上の成果より、我々は、極めて高精度なヒト肝幹細胞分離技術の開発に成功したと言える。そして平成19年度は、ヒト肝幹細胞の自己複製能を明確にし、組織分化能や癌形成能の検討などin vivoにおける機能解析を推進していく予定である。
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