O'Sullivanら(Nature Genetics '02)は、潰瘍性大腸炎から癌に至る過程で、上皮細胞の異型が増加し、癌に移行するにつれ、テロメア長が短縮し癌では正常よりテロメアが短縮していると報告しています。また、我々の研究では甲状腺乳頭癌の一部ではテロメア長が短縮せず、テロメレース活性を獲得しないものが存在することが確認されています。以上から、甲状腺分化癌の組織Q-FISH法によるテロメア長測定で極めて短いテロメアを所持する癌が将来的に未分化癌へ転化すると予想をたてた。 平成18年度は、食道癌と胃癌組織を用いて組織Q-FISH法によるテロメア長測定が良・悪性鑑別診断に利用できることを報告した(下記研究成果参照)。実際の甲状腺組織における実験では、甲状腺乳頭癌の組織切片(16症例)を用いて組織Q-FISH法によるテロメア測定を行った。正常甲状腺濾胞細胞、線維芽細胞、癌周囲線維芽細胞と乳頭癌細胞のテロメア長を比較すると有意に乳頭癌細胞で他の細胞に比べテロメア長の短縮が生じていた。組織Q-FISH法によるテロメア長測定法により、癌と正常細胞を区別することが証明された。一方、45才以上の甲状腺分化癌は未分化転化を起こすことで、悪性度が急上昇し致死的になることが知られている。平成19年度は、甲状腺分化癌の未分化転化をテロメア長測定により鑑別し得るかを検討課題とし、テロメレース活性とテロメア長短縮の関連性も含め、この研究を継続する予定である。
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