研究課題/領域番号 |
18591433
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 勝則 東京大学, 医科学研究所, 研究拠点形成特任教員(特任准教授) (60336394)
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研究分担者 |
片野 尚子 東京大学, 医科学研究所, 研究拠点形成特任教員(特任助教) (50376620)
田原 秀晃 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70322071)
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キーワード | アデノウイルス / ベクター / 遺伝子治療 / 膵がん / PKR / ras / VAI / IFN |
研究概要 |
PKR依存型の制限増殖アデノウイルス(Adv-mVAI)をがん細胞に感染させ殺細胞効果を期待する系で、細胞側のウイルス排除機構に関わるdsRNA-activated protein(PKR)の活性が高い場合、Adv-mVAIの殺細胞効果は十分に発揮することができない。しかし、がん細胞のなかでras遺伝子が変異型/活性型を示す場合、細胞内PKRの活性が低下しており、Adv-mVAIによる殺細胞効果を期待することができる。しかし、in vivoにおける増殖型アデノウイルスの無制限な複製は大きな副作用の要因であり、これに対する防御策として、Adv-mVAIの使用時に感染細胞内のPKR活性を上昇させることでAdv-mVAIの必要以上の複製を抑制することができると考えられる。そこで、細胞内PKRとAdv-mVAI殺細胞効果との関係を検討する目的で、変異型/活性型rasを持つ膵がん細胞株AsPc1ならびにInterferon-alpha(IFN)を用いて検討した。はじめに、Adv-mVAIのAsPc1に対する効果を50%殺細胞効果(IC50)で検討したところ800MOIであった。次に、AsPc1細胞をIFNで刺激し細胞内PKR活性を上昇させた系ではそのIC50は12,000MOIであった。このように細胞のウイルス排除機構に関連したPKR分子を細胞外から活性化することで同じ殺細胞効果を得るのにより多くのウイルス数が必要であることがわかり、細胞内PKRの活性を制御することでAdv-mVAIの増幅抑制が可能であることが示唆された。今後の制限増殖アデノウイルスの利用方法の有効な手段の一つと考えられる。
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