乳癌抑制遺伝子産物であるBRCA1を蛋白質レベルで制御する因子の解析は乳癌抑制のメカニズムを知る上できわめて重要である。以下、当初の目的とその結果を述べる。 (1)DNA傷害によってユビキチン化されるBRCA1の基質のスクリーニング (2)DNA傷害およびM-G1移行期にBRCA1が分解する際にBRCA1と結合する蛋白質のスクリーニング BRCA1を免疫沈降し、LC-MS/MS質量分析計を用いて結合蛋白質および基質を同定する際にこれまでのトランスフェクションを用いた系ではアーチファクトが生じる可能性があることから、内因性のBRCA1複合体を大量に免疫沈降することを目的とし、有用な既知のエピトープに対するウサギ血清を作成した。 (3)HERC2によるBRCA1制御機構の解析 全長14506bpの巨大なHERC2のcDNAを、7つのFragmentに分けてクローニングし、それぞれ段階的に融合させ、N末端とC末端の2つのFragmentまで作成した。Fragmentを用いた結合部位のマッピングの結果、HERC2はC末端のみでBRCA1と結合すること、中央部分のみが核内に移行すること、さらにこの部分がp53に結合するという結果を得た。 (4)HERC2トランスジェニック(TG)マウス MMTV誘導化にHERC2C末端を発現するTGマウス、13クローンを得て、このうち乳腺でのmRNA発現をするものを選抜し、観察したが、現在のところ乳癌発症例はない。
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