研究概要 |
我々は、最近、白血病細胞の新規分化誘導剤cotylenin Aは単独処理でもある程度乳癌株細胞MCF-7の増殖を抑制できるが、mTOR阻害剤で、分化誘導活性もあるrapamycinと併用処理すると相乗的にMCF-7細胞の増殖を抑制し、細胞周期のG_1期停止を誘導すること、さらに、MCF-7細胞を移植したヌードマウスに対しても、この併用処理は顕著な治療効果を示すことを見出した。したがって、これら分化誘導剤の併用処理は固形癌に対する新しい治療法となる可能性がある。しかし、これら分化誘導剤の併用処理の作用機序は殆ど解明されていない。我々はこれまでに、cotylenin Aとrapamycinの併用処理によるMCF-7細胞の増殖抑制は細胞周期のG_1期停止の誘導によるものであり、apoptosis誘導によるものではないこと、さらに、RT-PCR法を用いてG_1期停止の誘導に重要と考えられた遺伝子(p53,p21^<cip1>,p27^<KiP1>,cyclinD1 c-mycなど)の発現を検討したが、有意な変動はないことを明らかにしてきた。そこで、今年度はこれら併用処理による増殖抑制効果に関連する遺伝子を見出すために、cDNA microarrayを用いて、cotylenin Aやrapamycinの単独処理および、cotylenin Aとrapamycinの併用処理したMCF-7細胞の遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、cotylenin Aとrapamycin処理によりcyclin G2遺伝子発現が早期から顕著に誘導されることを見出した。また、この増殖抑制に伴いcyclinG2蛋白質も有意に増加していることも確認した。 このように今年度の研究では、新規分化誘導剤cotylenin Aとrapamycinの併用処理によるMCF-7細胞の増殖抑制効果には、cyclin G2の誘導が密接に関係していることを明らかにした。
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