研究概要 |
われわれの研究の究極の目的は薬剤、手術手技などにより消化管運動を制御して患者さんの愁訴を解決し、便秘や下痢の治療を行うことである。バニロイド受容体はcapsaicinが結合するnociceptorと考えられており、以前、我々はイヌにおいてcapsaicin胃内投与が結腸運動を亢進させて排便を誘発する事を報告した。この現象はcapsaicinが速効型経口排便誘発剤として臨床応用できる可能性を示唆しているが、排便と共に嘔吐をも高頻度に誘発することが臨床応用上大きな問題であった。今までに数種類のバニロイド受容体刺激剤が開発されているが、capsicin以外のバニロイド受容体刺激剤の結腸運動に対する効果は知られていない。本研究では嘔吐を誘発する事無く、排便誘発・結腸運動亢進作用を有するバニロイド受容体刺激剤を同定する事を目的に実験を行った。雑種成犬を用いStraingauge force transducerを結腸に逢着し、胃内に薬剤投与用のシリコンチューブを留置した。回復期間後に意識下に結腸運動を測定し、シリコンチューブからVR刺激剤である、piperine, anandamide, evodiamine, arvani1,resiniferatoxinを投与し結腸運動の変化、排便・嘔吐の有無について検討した。結果、resinifeartoxin及びarvanilはcapsaicinと同様に胃結腸反射を起こし、排便を誘発する事が判明したが、排便を誘発する際は嘔吐が必発であった。他の薬剤にはcapsaicinと同様の効果は認められなかった。各バニロイド受容体刺激剤の消化管運動に対するin Vivoでの検討を行っている施設は無く、このような結果は、今後の便秘治療剤開発の基礎データとして非常に重要であり、さらに検討を重ねて行く必要がある。
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