研究分担者 |
朝長 毅 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (80227644)
島田 英昭 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (20292691)
野村 文夫 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80164739)
松原 久裕 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (20282486)
西森 孝典 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30401003)
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研究概要 |
c-Myc蛋白は細胞の増殖,分化,細胞死(アポトーシス)を制御する転写因子である。細胞内のc-Myc蛋白を減少させることによりアポトーシスを誘導することができる。c-myc遺伝子の転写抑制因子であるFIR(FBP Interacting Repressor)をHeLa細胞に発現誘導したところ,アポトーシスが誘導された。一方FIRの転写活性部位であるN末端77個のアミノ)を削除した変異FIR蛋白ではアポトーシスが誘導されず,c-Myc発現プラスミドを共発現させるとFIRによるアポトーシス誘導は阻害された。すなわちFIRはそのアミノ末端の作用によりc-Myc発現抑制を惹起し,その結果アポトーシスを誘導するものと考えられた。本研究ではFIRのアポトーシス誘導能を利用したFIR発現ベクターを用いた消化器癌に対する遺伝子治療法を開発することに主眼を置いた。本研究期間(平成18年度から19年度)における本研究で得られた知見は以下の通りである。(1)c-Mycの発現増大が認められる消化器(大腸)癌組織中では転写抑制部位を欠損したFIRスプライシングバリアント(FIRΔexon2)が癌特異的に発現増大し,(2)FIRΔexon2が正常型FIRの機能を競合阻害し,c-Mycの発現増大とアポトーシス誘導阻害を同時にもたらすことが細胞の癌化に寄与しているという新規メカニズムを提唱した。以上の研究結果をもとにした本研究のトランスレーショナルリサーチとしての意義は,(3)FIRをアデノウイルスあるいはセンダイウイルスを発現ベクターとして用いることにより新しい癌遺伝子治療を開発し,さらに(4)癌細胞に特異的に発現するFIRΔexon2を末梢血中に検出することにより癌診断に臨床応用することを目指す,というものである。そのために必要な国際・国内特許を積極的に申請し,FIR遺伝子を用いた「アポトーシス誘導剤およびアポトーシス誘導方法」に関する国際特許を取得した。今後は本研究の結果をもとに臨床試験を行う予定である。
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