研究概要 |
ゲノムから蛋白レベルまでのアレイ技術を集約した解析システム構築により、主に食道扁平上皮癌(ESCC)をモデルに「ゲノム一次構造異常」ならびに「エピゲノム異常」の探索を起点にとした「癌の個別化医療」に必要十分な診断マーカーや治療標的となり得る癌関連遺伝子を迅速かつ体系的に同定することを目的に研究を進め以下の成果を得た。 1.BACおよびオリゴアレイを用いたCGHアレイ法による癌のゲノムコピー数異常の解析 ESCC細胞株ならびに臨床検体を対象に、自作BACアレイならびに高密度オリゴアレイを用いたアレイCGH解析を行い、新規ホモ欠失領域域、遺伝子増幅領域の同定と詳細なマッピングから、標的遺伝子候補の選択を進めた。ESCC以外にも卵巣癌、口腔癌、など様々な癌を対象に同様のアプローチを進め、特に肝細胞癌のアレイ解析からは予後推定に有用なマーカーの同定にアレイ解析が有用であることが示された(Tanaka S, in press:Katoh H et. al, 2007)。 2.ゲノムコピー数異常領域内標的遺伝子候補の臨床病理学的並びに生物学的意義の解明 個々のゲノムコピー数異常領域について、リアルタイムPCRや発現アレイならびに組織アレイによる発現解析システムを用いて効率的に標的遺伝子候補の解析を進めた。発現解析ならびにノックダウンによる細胞増殖抑制効果の解析からESCCの増幅標的遺伝子候補を絞り込み、抗体作製により臨床病理学的意義の検討を進めた。一方、ホモ欠失やプロモーター領域のメチル化により高頻度に発現消失する癌抑制遺伝子候補についても、ESCCをはじめ口腔癌、卵巣癌などで同定できた(Kikuchi et. al, 2007; Suzuki et. al, 2007; Sugino et. al, 2007)。 2.エピゲノム異常を標的とした癌抑制遺伝子候補の同定 BACアレイ上で異常メチル化領域を検出するBAMCA (BAC-array based methylated CpG island amplification)法を用いて、メチル化により発現抑制を受ける癌抑制子候補を同定し、発現消失の生物学的・臨床病理学的検討を行った。
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