研究概要 |
DNAメチル化の異常と核酸、葉酸代謝の変化との関連を理解するため,オーストラリア人の大腸がん114検体を対象として,核酸、葉酸代謝にかかわる17遺伝子のmRNA発現を定量した。同時にCACNAIG,IGF2,NEUROG1,RUNX3,SOCS1のプロモーターメチル化を解析し,CpG island methylator phenotype(CIMP)と各遺伝子発現の関係を検討したところgamma-glutamyl hydrolase(GGH)のmRNA発現はCIMP癌で有意に低値であった。この関連を確認する目的で,日本人の大腸がん150検体を対象としてCIMP癌の判定を行った。CIMP+と判定された14検体と,CIMP-と判定された79検体を対象としてGGH mRNAを定量したところ,日本人の大腸がんでもGGH mRNAはCIMP癌で低いことが確認された。GGHは葉酸代謝の中心的酵素であることから,大腸がんにおけるDNAメチル化の獲得、維持には葉酸代謝の破綻が少なからず関連していると考えられた。 上記のプロモーター領域におけるDNAメチル化の解析に並行して,非遺伝子領域でのDNA低メチル化の判定法を開発した。開発した解析法により110例の大腸がん症例を解析したところ,DNA低メチル化は有意な予後不良因子であった。37検体でDNA低メチル化と18番染色体長腕のloss of heterozygosity(LOH)を解析したところ,DNA低メチル化はLOH陽性の大腸がんでより高頻度に認められた。この結果は,DNAの低メチル化がゲノム不安定性の要因になるとの予測と一致し,癌の予防においてDNAメチル化の維持が重要であることを示した。
|