初回治療で外科的切除を行った食道扁平上皮癌の切除標本の癌部、非癌部それぞれから蛋白質を抽出し、2次元電気泳動により分離した。癌部と非癌部の蛋白スポット発現を比較し、増強または減弱するスポットを質量分析器LC-MS/MSにより同定した。癌部で発現が増強する蛋白スポットは、tropomyosin alpha 4 chain(TPM4)、transgelin、pyruvate kinase M1 isozyme、減弱する蛋白スポットは、tropomyosin beta chain、annexin A1、14-3-3 protein sigma、serotransferrin precursor、 serum albumin precursorと判明した。lmmunoblot分析ではTPM4、pyruvate kinase M1 isozymeの増強、14-3-3protein sigmaの減弱が確認された。特にTPM4は全例で増強が確認された。免疫組織染色でも癌細胞でTPM4、pyruvate kinaseの増強と14-3-3protein sigmaの減弱が確認された。TPM4は癌細胞周囲の線維芽細胞でも増加していた。TPM4は細胞骨格安定作用を持ち、今回の免疫染色では癌細胞とその周囲の線維芽細胞でも増強があることから、細胞形態の変化と周囲増殖へ何らかの影響を及ぼすと考えられた。TPM4が分化度、癌細胞の浸潤度などの進行度との関係、血清での増減、血清抗体の増減を検討することにより有効なマーカーとしての検討が必要と考えられた。
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