研究概要 |
食道扁平上皮癌のP53遺伝子異常 喫煙等の環境因子の標的遺伝子の可能性のあるp53の遺伝子異常を95症例の日本人の食道癌サンプルにて解析し、地域による差を検討するとともに、発癌における役割につき考察した。【結果】(1)食道癌症例においてはtransversion変異を50%と高頻度に認め、G:C→T:A変異は25%と特に多かった。(2)それに対し、transition変異の頻度は比較的、低かった。(3)frameshiftは21%と比較的高頻度に認めた。【考察】これらの結果は、p53遺伝子異常が食道癌の多段階発癌において重要であると共に、タバコの成分であるベンツピレン等による酸化的DNA損傷およびDNA修復異常が他の消化管癌に比べ強く関与していることが示唆された。 (Cancer Science 98:1152-1156,2007) 細胞周期調節タンパクp14、p16のメチル化および発現解析 細胞周期調節タンパクp14、p16は癌抑制遺伝子としての性質を有し、メチル化等によるこれらの発現低下は癌化、癌の進展に関与している可能性がある。さらに、喫煙等の環境因子の標的遺伝子である可能性がある。今回、38症例の食道扁平上皮癌症例でメチル化を検討すると共に、18症例により発現を検討した。【結果】p14の発現低下例は進行した症例が有意に多く、メチル化と相関していた。一方、p16に関してはこれらの相関を認めなかった。【考察】食道癌においてp14のメチル化はその発現低下に重要で、さらに食道癌の浸潤、転移に関与している可能性が示唆された。 (Anticancer Research 27:3345-3354,2007)
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