研究概要 |
制限増殖型レオウイルスはras経路が活性化している癌細胞に選択的に感染・増殖し、細胞溶解を引き起こす(Lee et al. Science, 1998)。膵癌では80%以上の症例にK-ras遺伝子の変異が存在し、細胞内ras経路が活性化しているため、レオウイルスの標的となりうることを我々は世界で初めて報告した。平成16-17年度科学研究費補助金・研究課題「腫瘍溶解性ウイルス(レオウイルス)を用いた膵癌に対する新しいウイルス癌治療法の開発」にて以下の研究成果を挙げてきた。 ●膵癌細胞株に対するレオウイルスの殺細胞効果を確認した。 ●膵癌異種動物モデルにおいて、皮下腫瘍に対するレオウイルスの抗腫瘍効果を認めた。さらに組織学的に癌特異的な感染を証明した(Etoh et al. Clin Cancer Res : 9 ; 1218-23, 2003)。 ●膵癌同種動物モデルにおいて、膵癌肝転移に対するレオウイルス門脈内投与での抗腫瘍効果を認めた(Himeno et al. Int J Oncol : 27 ; 901-907, 2005)。 ●膵癌同種動物モデルにおいて、膵癌腹膜転移に対するレオウイルス腹腔内投与での抗腫瘍効果を認めた(Hirano et al. Br J Cancer, submitted, 2005)。 本研究では、癌特異的に感染・増殖する制限増殖型レオウイルスを利用し、リンパ節転移の新しい診断法の開発、すなわち新しいトレーサーの開発を行う。現在、MRI検査のEnhancerであるlymphotrophic superparamagnetic nanoparticle(LSPN)をレオウイルスに導入している。今後、リンパ節転移巣に特異的に感染させ、MRI検査にて転移リンパ節の同定を行う予定である。
|