1.miRNAの発現プロファイルの作製 当初の予定では、マイクロアレイを用いて、プロファイルの作製を行う予定であったが、マイクロアレイはやや高価であり、qualityも落ちると思われたことから、新たに臨床病理学的背景の異なる約40症例の食道癌臨床検体をmiRNA用にRNAを抽出し、miRNA用のRT反応をTaqman miRNA RT kitを用いて行い、Taqman PCRにて73種類のmiRNAの発現を定量した。その発現パターンに特徴のあるmiRNAとその標的遺伝子について解析を行う予定である。 2.発現パターンに特徴のあるmiRNAの同定 現在までに、癌部で発現の低いhsa-miR21、癌部にて発現が増加し、正常組織では発現のみられないhas-miR-34bを同定した。Has-miR-21のターゲット遺伝子としてPLAG1、P85α(PIK3R1)が候補として挙げられており、has-miR-34bのターゲットとして、DLL1が挙げられている。 3.LightCyclerを用いたmiRNA標的遺伝子の解析 第二段階の実験として、LightCyclerを用いて、臨床検体のmiRNAのターゲット遺伝子の遺伝子発現を定量し、臨床病理因子などとの関連性を検討した。まずPLAGの発現を定量したが、有意差のみられる結果は得られなかった。p85α(PIK3R1)は腫瘍部高発現群にて予後不良であった。(P-0.0070)これは、miRNAの発現が低下したことにより、PIK3R1の発現が上昇し、それらが癌の悪性度を高めた可能性が示唆された。さらに、DLL1の発現も予後と関連がみられ、発現低下群で予後不良であった。今後は、これらが本当にターゲット遺伝子であるかどうか、ベクターを作製し、miRNAの機能解析を行っていく予定である。
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