研究概要 |
放射線被曝がない非侵襲的なリアルタイムMRI (cine MRI)を使用して、胃運動機能が客観的に評価できるかを検討した。健常人10例を対象にcine MRIによる胃運動を検討した結果、蠕動波が画面上で明瞭に観察できた。試験食はゼリー180gとし、撮像条件は2D FIESTA、TR/TE=3.8/1.2ms、flipangle45゜、撮像速度は1.3phase/sとした。撮像画像から蠕動波高(d)と移動距離(X)を計測し、蠕動速度(V=X/time)およびgastric motility index (GMI=V×d)の算出が可能であった。胃内容積は2D画像によるトレース法と3D画像によるvolumetoryで算出し、経時的胃排出率を検討した。また、幽門保存胃切除術(PPG)5例、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)3例の胃運動に対しても検討した。健常人(試験食摂取直後/30分後)では、平均蠕動波速度は2.2/2.3mm/s、蠕動波高は7,7/8.8mm、GMIは17.0/20.4mm^2/s、胃排出率は15.9%と本法で評価可能であった。PPG症例では、胃体部から温存幽門輪にかけて2.5回/分の蠕動波を認め、全例で吻合部を境界に蠕動波の連続性がなく、有症状の3例中2例に幽門部の逆蠕動様所見が認められた。術後胃内鬱滞症状を認めた3例は、無症状の2例に比べて胃排出率が低値(11,0/37.3%)で、本法で評価可能であった。PPPD症例では撮像面設定が困難で、さらなる検討が必要と思われた。本研究により、被験者の負担が少ない新しい胃運動機能検査法の可能性が示された。また直視下に蠕動運動を観察し、その結果を数値化することで、より具体的、客観的な機能評価が可能になると思われた。
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