従来より癌抑制遺伝子である可能性が指摘されていたhyd遺伝子のヒトorthologueであるEDDが家族性大腸ポリポージスおよび大腸癌の原因遺伝子であるAPC(Adenomatous Polyposis Coh)がAPCの安定化を介して大腸癌の発症抑制をする可能性について解析した。平成18年度の研究結果を下記に示す。 1)HEK293T細胞にMyc-APCとmAxinをトランスフェクションし、抗Myc抗体にて免疫沈降、Mycpeptideにて溶出させたMyc-APC/mAxinタンパク質複合体を質量分析計にて解析した結果、EDDを同定した。 2)in vivoにて過剰発現させたMyc-APCとEDDの結合を認めた。 3)in vivoにて内因性のAPCとEDDの結合を認めた。 4)293T細胞とHeLa細胞において内因性のAPCとEDDは細胞質に共局在した。 5)in vivoにてEDDを過剰発現させるとEDD濃度依存的にAPCとmAxinの発現増強を認めた。 6)MCF7細胞、HeLa細胞においてsiRNAにてEDDをノックダウンするとAPCの分子量の変化と同時にAPCタンパク質の発現量が低下した。 7)上記6)においてAPCのmRNAレベルには変化が認められなかった。 以上よりEDDはAPCと結合し、APCをタンパク質レベルで安定化させることが判明した。特にEDDをノックダウンするとAPC蛋白に何らかの修飾がおこり、発現量が低下することは、上述したEDD変異を認める大腸癌や胃癌において、EDD機能不全がAPCタンパク質の機能不全を介してこれらの癌を生じさせた可能性が考えられる。以上の結果は論文として投稿した。
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