研究概要 |
癌抑制遺伝子候補ショウジョウバエhyd遺伝子のヒトorthologueであるEDDが家族性大腸ポリポージスおよび大腸癌の原因遺伝子であるAPC(Adenomatous Polyposis Coli)の安定化を介して大腸癌の発症抑制をする可能性について検討した。平成18年度の研究結果よりEDDはAPCと結合し、APCをタンパク質レベルで安定化させること、特にEDDをsiRNAでノックダウンすると内因性のAPC蛋白に何らかの修飾がおこり、発現量が低下することがわかったため、19年度はその下流に起こる変化と細胞内局在に焦点をあてて解析した。その結果、APCによって抑制されることが知られているβ-cateninは、トランスフェクションによるEDDの過剰発現によって抑制された。逆に、siRNAによるEDDの発現抑制によってAPCの発現が抑制される際に、β-cateninの発現は増強した。また、APCの細胞内局在は過去の報告で細胞株、抗体によって矛盾があるため、293T,HeLa,MCF-7,T-47Dを含む複数の細胞株と3種類のAPC抗体を用いて詳細に検討した。その結果、全ての細胞において、EDDはAPCと核周囲の細胞質に共局在することがわかった。以上より、EDDは核周囲でAPCに結合し、APCを蛋白質レベルで安定化し、その機能を促進していることがわかった。EDDはマイクロサテライト不安定な胃癌と大腸癌において高頻度に変異が認められる。したがってEDDはAPCを介して働く大腸癌および胃癌の癌抑制遺伝子であることが示唆された。以上の結果はGenes Cells.2007Dec;12(12):1339-45.に報告した。
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