前年度センチネルリンパ節同定のための新しいトレーサーとして、当院倫理委員会の承認を経て蛍光ビーズ使用に同意の得られた胃癌症例に対し蛍光ビーズを用いた胃癌センチネルリンパ節(S:N)同定を行いその有効性について報告した。今回、症例数を加え報告する。 手術前日、上部消化管内視鏡下で内視鏡病変粘膜下4箇所に蛍光ビーズをそれぞれ1mlずつ注入し手術時紫外線照射し蛍光発光したリンパ節をSNとした。また、漿膜側からのICG注入による色素法でのSN同定も同時に試みた。SN検索後は標準郭清を行い摘出組織に対しても紫外線照射を行いSNの検索を行った。蛍光ビーズの使用に同意の得られた胃癌31例中蛍光ビーズSNが同定されたのは23例、同定率74.1%であった。早期胃癌25例に限ると蛍光ビーズSNは19例で同定され同定率76%であった。同定された平均SN個数は2.3個であった。早期胃癌症例における蛍光ビーズSNの正診率は94.7%(18/19)であった。術中併用したICGと蛍光ビーズを合わせた同定率は92%であった。蛍光ビーズ単独では同定率が低いことからICGとの併用が必要と考えられた。しかし、蛍光ビーズ単独でもリンパ節転移を的確に捉えているかという点では正診率が94.7%と良好であった。また、術野に紫外線照射して蛍光ビーズの発光を試みたが、脂肪組織深部にあるリンパ節は不明瞭であった。加えて脂肪組織、神経など自己蛍光発光を示す組織がありリンパ管との判別を惑わすことがあった。全ての症例で術中に蛍光ビーズのSNを同定することは困難で、切除摘出組織への紫外線照射でSNを同定する事は可能であった。今後蛍光ビーズを臨床応用するには術中紫外線照射によるSN同定を可能にする機器の開発が必要と思われた。 また、摘出された全リンパ節に対し抗サイトケラチン(AE1/AE3)を用い免疫組織染色を行い微小転移の検索を行った。25例中1例(4%)に微小転移を認めた。その1例の微小転移の位置はSNの存在するstation外であった。しかし、この症例は初期症例であった為SN同定手技が安定していなかった事も考慮すべきと思われた。
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