研究課題/領域番号 |
18591490
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
柴尾 和徳 産業医科大学, 医学部, 助手 (10330987)
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研究分担者 |
永田 直幹 産業医科大学, 医学部, 助教授 (80200377)
平田 敬治 産業医科大学, 医学部, 助手 (70269059)
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キーワード | IP3レセプター / 大腸癌 / 細胞増殖 / カルシウムシグナリング / アポトーシス |
研究概要 |
イノシトール3リン酸レセプター(IP3Rs)は滑面小胞体の細胞膜に存在し、細胞内へのカルシウム放出に関与している。細胞内カルシウムシグナリングは遺伝子の転写、細胞の移動、神経発育のほか、免疫、消化液分泌など重要な細胞機能に関与しているため、IP3Rsの発現もまた細胞機能に深く関与しており、アポトーシスや細胞増殖、分化との関連も示唆されている。IP3レセプターには1型から3型の3種類のサブタイプが存在し、特に胆管上皮に存在する3型IP3Rは、胆汁うっ滞性疾患で共通して発現が減少するなど病因との関係が明らかになってきているが、大腸癌を含めたヒト癌組織における3型IP3R発現の意義については未だ検討されていない。そこで、我々は大腸癌切除例における3型IP3Rの発現を免疫組織学的に評価し、臨床病理学的解析を加え検討した。3型IP3Rは非癌部ではほとんど発現が認められなかった。癌部では細胞質の管腔側に発現している症例を認めた。3型IP3R発現と臨床病理学的因子との検討では、弱発現群でリンパ節転移、腹膜転移が有意に多く、肝転移、肺転移の全症例が強発現群であった。以上の結果より3型IP3R発現は大腸癌における新しい悪性度の指標となる可能性が示唆されたが、更なる検討を予定している。以上の結果は第107回日本外科学会定期学術集会において報告した。また、未発表ではあるが、大腸粘膜、癌部における3型InsP3レセプター発現の詳細解析、アポトーシスやシグナル伝達系関連因子との相関関係等興味ある知見を得ており、蛍光免染による2重染色やウェスタンブロット解析など更なる解析を加えている。大腸癌手術症例の内、予後の判明していなかった症例の追跡調査も終了しており、約300例において臨床病理学的に解析予定である。
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