研究概要 |
一般に進行癌治療において抗癌剤治療は重要な役割を有するが、抗癌剤感受性を予測する指標の開発が望まれている。本研究は、アポトーシスシグナルを制御するストレス誘導性蛋白質に着目し、消化器系をはじめとする癌臨床検体を用いて、抗癌剤感受性予測因子、予後規定因子を明らかにすることを目的とした。 進行胃癌に対してS-1/シスプラチン併用による術前化学療法を実施し、同治療法の有効性を示した。化学療法開始前の内視鏡生検検体よりRNAを抽出し、種々の遺伝子発現を調べたが、今回検討した10症例の結果では抗癌剤感受性予測因子の同定には至らなかった。さらに症例を追加し検討する予定にしている。 膀胱癌臨床検体においては、種々のストレスや癌抑制遺伝子p53により誘導されるガレクチン-7高発現が抗癌剤シスプラチンの高感受性を示すことを明らかにした。シスプラチンによる細胞内シグナル伝達として、活性酸素種(ROS)産生とJNK活性化を増強することによりガレクチン-7がアポトーシス感受性を増加することを示した。 (英文論文発表 Matsui Y.他,2007) また抗癌剤による有害事象発生を示唆するマーカー探索の目的で、非小細胞性肺癌患者の血漿中チオレドキシン値を測定した。血漿中チオレドキシン値上昇が分子標的薬剤であるEpidermal growth factor receptor(EGFR)阻害薬gefitinibによる重篤な有害事象である間質性肺炎発症と相関することを明らかにし、間質性肺炎の病勢評価に有用であることを示した。(英文論文発表 Sakuma K.他,2007) 本研究の結果、将来的にはレドックス制御分子を用いた癌治療戦略、各遺伝子発現を考慮したオーダーメイド治療が新たに構築される可能性が示唆された。
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