研究概要 |
胃癌継代培養細胞株3株(MKN-45、AZ-521、KATO-III)と大腸癌株(HCT-15)をヌードマウス腹腔内で継代培養して樹立した高度腹膜転移株MKN-45P, AZ-521P, KATO-IIIP, HCT-15Pを用い、腹膜播種高度転移株と親株における遺伝子発現の差をDNAチップ,プロテオーム解析で網羅的に分析した。 DNAチップはGeneChip (Affimetrix社)を使用、得られたデータはGeneSpring (Agilent社)で解析した。 プロテオミック解析は二次元クロマトグラフィーとマスペクトル解析で、転移株で発現変化の見られる蛋白質を同定した。その結果、87種類の腹膜播腫形成候補遺伝子を見出した。これらの遺伝子の発現状態の詳細をリアルタイム定量PCRとノーザンブロッテングにより検討したが、明らかに発現が更新していたカルモジュリン、グリセンチン、MMP-7に対する特異抗体による免疫組織学的染色を行うとともに標的分子をノックダウンさせた細胞株を樹立しているところである。 また、腹膜播腫で切除された腹膜の血管・リンパ管をD2-40・5'-Nase-ALP染色を行い、血管とリンパ管の新生を調べた。その結果、ヒトの腹膜播腫では骨盤や横隔膜でリンパ管が多数新生しているのを確認した。さらにVEGF-C遺伝子を導入し、これを過剰発現させたMKN-45-P-VEGFCをヌードマウス胃壁に移植したところ胃壁のリンパ管の新生が認められた。 胃癌腹膜播種で腹水を有する例の腹水を採取し、ウエスタンブロット法でVEGF-Cの発現をエンザイムイムノアッセイでVEGFの発現を検討した。腹水中ではVEGFは全例、VEGF-Cは25%の例で検出された。この事実から、腹膜播腫では胃癌が産生するVEGF/VEGF-Cが腹膜下血管・リンパ管を増殖させている可能性が高いと考えられた。 そこで、VEGF-Cを免疫源として単クローン抗体を作成した。この抗体による血管・リンパ管新生が抑制されるか否かを検討した。
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