研究概要 |
KATPの存在部位が当初想定していた肝実質細胞ではなく血管内皮細胞であることから、KATPに固執せず、KATP投与による化学的循環改善よりもより直接的に肝微小循環を改善する物理的手法を考案しその適否を検討した。 本年の研究において、我々は、肝微小循環を制御すると言われている肝星細胞に着目した。肝星細胞は類洞における肝微小循環の制御を担っている可能性があると考えられている。そこで、われわれはこの肝星細胞を外的に修飾することで肝虚血再灌流障害を軽減できないか検討し、その結果を本研究の最終的な到達目標とした。 肝星細胞は細胞外マトリックスの調節と自身の伸縮により組織骨格の調節を行っている。よって虚血再灌流時における肝星細胞の変化を解明し、それを制御することで虚血再灌流障害からの脱却につながるのではないかと考えた。 Gliotoxinという薬剤はin vivoにおいて肝星細胞にアポトーシスを誘導することが知られている。また、肝線維化モデルにおける活性化星細胞のアポトーシスを誘導することは知られている。このGliotoxin投与により肝星細胞数が減少することを明らかにした。また、その減少に伴って、肝類洞の拡張を認めた。 これにより、その後の虚血再直流時の類洞におけるperfusionが保たれたと考えられる。すなわち、肝星細胞は類洞径を変化させることによって、肝微小循環を調節していると考えられる。 肝微小循環の保持は虚血再灌流時における組織障害を抑制することが示された。血中AST,ALTおよびLDH値は組織変化を良く反映していた。肝星細胞を減少させることは、類洞の径拡大と、それに伴う微小循環の保持をもたらし、結果的に肝保護効果に働いたと考えられた。
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