研究概要 |
【目的】肝細胞癌においてisoform別にCEACAM1発現をmRNA、蛋白レベルで検出し、CEACAM1発現欠失の機序及びその臨床的意義を解明することである。 【方法】(1)RT-PCR、免疫染色、Western blot法により、5種類の肝癌細胞株(HLF,HepG2,HuH7,PLC/PRF/5,KYN2)における細胞外基質非依存性増殖(anchorage-independent growth: AIG)を検討し、siRNAによるCEACAM1抑制下における肝癌細胞株のAIGを観察した。(2)transmembrane domain(M)には細胞接着因子、cytoplasmicdomain(Cyt)には癌抑制遺伝子としての機能が存在することから、肝細胞癌切除例70例におけるisoform別CEACAM1発現を検討した。 【結果】(1)一連の細胞表面蛋白を検討した結果、CEACAM1が各細胞株のAIG獲得能に強く相関して発現変動することを見出した。すなわち、HLFは細胞外基質存在下ではCEACAM1を発現しないが、細胞外基質のない条件下では細胞表面に強発現した。よって細胞外基質非依存性条件下では、CEACAM1を介して細胞間接着を促しapoptosisを抑制している可能性が示唆された。一方、CEACAM1をcytoplasmic domainに強発現しているHepG2株に対してsiRNAによるCEACAM1発現を抑制した結果、AIGレベルが増加した。よってcytoplasmic domainのCEACAM1がdominant-negativeに機能している可能性が示唆された。(2)肝細胞癌70例におけるisoform別CEACAM1発現を調べたところ、15例でtransmembrane domainのみが欠失しており、9例でcytoplasmic domainのみが欠失していた。18例でtransmembraneおよびcytoplasmic domainの両者が欠失していた。【結論】各種肝癌細胞株におけるAIG獲得能は、各々のCEACAM1発現動態に密接に相関していたことから、CEACAM1発現欠失は肝癌症例における癌転移に密接に関与していることが示唆される。
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