研究概要 |
【目的】閉塞性黄疸では、腸管免疫能の低下や腸管粘膜透過性の亢進が起こり、これがbacterial translocationの誘発、さらには肝障害の一原因となると考えられている。また、PPAR-γは炎症反応の抑制、抗酸化作用、免疫能調節などさまざまな働きがあり、ストレス下における臓器障害調節を担うメディエーターの一つである。今回、我々は胆管閉塞時におけるPPAR-γの役割について、腸肝免疫および肝障害に着目して検証した。 【方法】ラットの胆管結紮(BDL)モデルを用いて胆管結紮後1日目に血液および肝臓、小腸、バイエル板を採取し、血漿中TNF-α,IL6,IL-10,15d-PGJ_2濃度を測定した。また、肝臓、小腸、パイエル板ではPPAR-γの発現をreal-time RT-PCRにて評価した。さらに、胆管結紮時およびその12時間後にPPAR-γのアンタゴニストであるGW9662を投与する群を作成し、投与しない群と比較検討した。 【結果】BDL群では血漿中TNF-α,IL-10濃度は有意に上昇しており、PPAR-γのアゴニストである15d-PGJ_2濃度も約2倍に上昇していた。real time RT-PCRでは肝臓におけるPPAR-γの発現も有意に上昇していたが、小腸およびパイエル板での発現に有意差はみられなかった。また、GW9662投与の有無による比較検討については、現在解析中である。 【今後の課題】BDLにより血漿中15d-PGJ_2濃度の上昇、肝臓でのPPAR-γ発現増加が確認され、胆管閉塞時における免疫機構、肝障害へのPPAR-γの関与が示唆されたため、GW9662投与下でのパイエル板を詳細に検討していきたい。さらに胆管結紮時にlipopolysaccharideを胆管内に注入して閉塞性胆管炎モデルを作成し、15d-PGJ_2投与の有無にて生存率を比較検討したい。
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