研究概要 |
1.Thy1(+)gp38(+)細胞を用いた肝前駆細胞の成熟化培養法の確立 マウス胎仔肝臓由来CD49f(+)Thy1(-)CD45(-)肝前駆細胞は,Thy1(+)gp38(+)間葉系細胞と共培養することにより,グリコーゲンの産生・蓄積(PAS染色),RT-PCRによる肝臓発生後期マーカーの出現,肝細胞への形態変化(電子顕微鏡での観察)が認められた.これらの結果によりThy1(+)gp38(+)細胞は肝細胞への成熟化を促進する作用を有することが示された.この肝細胞成熟化能は接触共培養することによってのみ認められ,conditioned mediumを用いては認められなかった. 2.Thy1(+)gp38(-)細胞を用いた肝前駆細胞の未分化維持培養法の確立 1)未分化維持培養法 肝幹・前駆細胞成熟促進能を有しているThy1(+)gp38(+)細胞とは異なり,Thy1(+)gp38(-)細胞は肝前駆細胞の成熟化を阻害する.これは逆に肝前駆細胞の未分化性を維持することを示唆している.実際にThy1(+)gp38(-)細胞と肝前駆細胞との共培養によって,肝発生後期マーカーが発現してこないことや肝細胞と胆管細胞のマーカーが両者とも発現している割合が増加していることから,Thy1(+)gp38(+)細胞が未分化維持機能を有していることが示された.さらにBrdUの陽性率が増加し,肝前駆細胞の増殖活性を維持することも示唆された. 2)Thy1(+)gp38(-)細胞細胞の機能解析 Thy1(+)gp38(-)細胞から得られたconditioned mediumを用いて培養すると,Thy1(+)gp38(+)細胞の肝前駆細胞成熟化促進能が阻害されることが示された.このことにより,Thy1(+)gp38(-)細胞が持っている未分化維持機能は液性因子であることが示唆された.
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