研究概要 |
【目的】膵管内乳頭粘液腫瘍(iltraductal papillary mucinous neoplasms;IPMN)は病理学的にadenoma-carcinoma sequenceの病態を呈しているため、上皮内癌や微小浸潤癌の段階での質的診断はしばしば困難である。このため癌化を決定する新しい診断法の確立が急務である。そこで膵液を用いて膵液中細胞の癌関連遺伝子であるCEA、human telomerase reverse transcriptase(hTERT)、およびmucin familyのひとつであるMUC1のmessenger ribolucleic acid(mRNA)の定量を検討した。すなわち、術前にIPMNの癌化診断が可能であるか否かを分子生物学的に検討した。【方法】膵腫瘍34例中の膵液中のCEA、hTERT、MUCImRNA発現量を定量化しGAPDHのmRNAの発現量で除し、100倍したものをそれぞれCEAratio、hTERT ratio、MUCI ratioとし、receiver operating characteristics curve(ROCcurve)を用いてカットオフ値を設定して癌化の予測因子となりうるかを検討した。【結果】IPMNにおける良性群と悪性群では、MUC1が悪性群に有意に高発現していた(1,079±879vs6,938±7,930、p=0.0229)。膵液中細胞のMUCImRNA発現量のIPMN癌化におけるカットオフ値はROCcurveによって1,600となり、その感度は88.9%、特異度71.4%、陽性反応予測値80%、陰性反応予測値83.3%、正診率81.3%となった。【結語】膵液中のMUCImRNAの定量による遺伝子診断は、IPMNの診断ならびに治療方針を決定する指針になることが判明した。
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