研究概要 |
【目的】肝虚血再灌流障害において、肝虚血直前に数分間の前虚血(ischemic preconditioning(IP))を行うことが、肝虚血再灌流障害抑制になるということが報告されている。今回、脂肪肝におけるIPの有用性を検討した。【方法】30週齢の脂肪肝homozygous Zuckerラットを用いて、10分間の全肝ischemic preconditioningを施行した後に70%肝虚血を60分間施行しモデル(IP群)とischemic preconditioningを施行しないで70%肝虚血を60分間施行しモデル(Non-IP群)とを比較して、脂肪肝におけるischemic preconditioningの有用性を検討した。24時間後の肝を採取し、肝ミトコンドリア分画を分離し、肝ミトコンドリア蛋白を二次元電気泳動により分離し、肝切除前後で有意に変化した蛋白スポットを同定し、Sypro Ruby染色を施行して、蛋白スポットを切り出した後に、イオントラップLC/MS/MSシステムでアミノ酸配列を解析し、Mascot Researchにて蛋白を同定した。また、ミトコンドリア機能をミトコンドリア内膜電位(JC-1)にて判定した。【結果】IP群、Non-IP群のミトコンドリア内膜電位減少率(JC-1減少率)は、それぞれ54.3±11.9%とWistarラットの52.8±7.5%で、両群間に差を認めなかった。また、AST、ALTなどの肝障害においても差は認められなかった。IP群ではNon-IP群に比較して、Mn-superoxide dismutase(SOD),Alpha-methylacyl-CoA racemase(AMACR)の有意なdown-regulationが認められた。一方、ubiquinol cytochrome C reductase core protein I, 2-cystine peroxidase, Aldehyde dehydrogenase 2-mitochodrial precursor(ALDH2)の有意なup-regulationが認められた。【結論】脂肪肝において、IPの有用性は証明されなかったが、IPにより有意に変動するミトコンドリア蛋白が検出された。
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