【目的】がんワクチン候補ペプチドとして同定した自己抗原由来ペプチドに対する抗体を、少量の血漿を用いたハイスループット型測定法を用いて測定した。これらのデータを推計処理して判別する方法を用いて膵臓癌診断法の確立を目的として本研究を行った。【結果と考察】血漿は膵臓癌の手術時における患者の情報がそろった症例の血清47例を集めた。対照として大腸がん15名、胃がん32名、健常人42名、具体的には、膵臓癌と診断され、かつ外科手術適用患者のうち、インフォードコンセントが得られた場合に限って血液を採取し、血清を分注して使用時まで保存した。充分の数の検体が得られなかったことから山口大学および関西大学との共同研究として行った。上記目的のためには、EUSA法では莫大な数の測定が必要になるため、フローメトリーによる測定系を用いた。具体的には、63種類のペプチドをそれぞれ異なった種類の蛍光ビーズに共有結合させた。健常人の測定値の平均値に標準偏差を加えた値をカットオフ値とした場合、63人の膵臓がん患者のうち、SART3-109およびEGFR-479に対する抗体がそれぞれ42.6%および31.9%であった。しかしながら、健常人血清でもそれぞれ21.4%および9.5%が陽性と判定された。測定結果を判別分析によってすい臓がんの83%がすい臓がんと判定されたが、健常人の12%もがんと診断された。すい臓がんは血清診断が難しく、なかなか早期発見ができない。従って、擬陽性が12%もあるものの、83%のすい臓がん患者がすい臓がんと判定されたことからこの方法が診断法となりえることが示唆された。多数の抗原に対する抗体の反応パターンを解析することによって、より正確な判定が可能であることが示唆されたことから、今後すい臓がん関連抗原由来ペプチドに対する抗体のスクリーニングを行って候補を増やし、改良していく予定である。
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