研究概要 |
すい臓がんのマーカーと考えられている数種類の分子由来T細胞受容体結合ペプチドに対する抗体を,健常人血漿(n=29;男性16および女性13名,平均年齢64歳)およびすい臓がん患者血漿(n=40;男性31および女性9名,平均年齢65歳)で比較した。対象分子としてc-kit, c-met, methoterin,エステラーゼ,ヒト膵アミラーゼ,およびPSCA由来ペプチドをそれぞれ13,75,29,24,27および57種類ずつ選び,70%以上の純度で合成した。これらのペプチドに対するIgG抗体を, Luminexを用いたフローメトリー法でスクリーニングした結果,15種類のPSCA由来ペプチドのみが健常人血漿と比べて膵臓がん患者血漿中に有意に高値を示した。これらの15種類のペプチドに対するIgG抗体を,非がん患者(n=60;健常人n=28,尿路結石n=16,IgA腎症n=16)に対して,すい臓がん(n=40),前立腺癌(n=38),大腸がん(n=20),および胃がん(n=20)患者血漿で調べたところ,それぞれ10,2,8,および4種類のペプチドで非がん患者に比べてIgG抗体が有意に高いことが分かった。そこで,非がん患者の測定結果の平均プラスSDをカットオフ値として, PSCA2-11,85-95,および109-118の3種類のうち少なくとも1種以上のペプチドに対する抗体が有意に上昇した場合陽性とすると,膵臓がん患者の80%および非膵臓がん患者の18%がそれぞれ陽性と判定された。以上のことから,少量の血漿サンプルを用い,同時に多数の抗原に対して抗体を測定できるフローメトリー法を用いることによって,より正確なすい臓がん診断が可能であることが示唆された。更に,昨年度報告したペプチド抗原などを加えて,複数の抗原同時測定を行い,判別分析などの統計学的手法により,すい臓がんのより精度の高いスクリーニングあるいは診断が可能であることが示唆された。
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