研究概要 |
背景:肝臓癌においては、同じ腺癌である肝内胆管癌と転移性肝癌の鑑別はしばしば臨床の現場で困難であることがある。 方法:癌研有明病院で2004年1月から2006年8月までの間の手術症例の中で、新鮮生標本が採取された胆管細胞癌8例、転移性肝癌34例(大腸癌26例、胃癌7例、乳癌1例)であった。切除標本を固定し、Laser Micro Dissectionにより、癌組織を切り出しTotal RNAを抽出した。PCRで増幅した後、Affymetrix社GeneChip U133Plus2.0Arrayを用いて約50000transcriptsを解析した。この中で、胆管細胞癌(ICC)、大腸癌肝転移(CLM)および胃癌肝肝転移(GLM)を対象に解析を行った。従来の方法である免疫染色による鑑別(CK7,19,20)も同時に行った。 結果:P-callが約13000transcriptsあり、これらを用いてUnsupervised階層的クラスタリングを行ったところ、大腸癌肝転移の1症例を除いてICC,CLM,GLMは3群にクラスター化された。3群において差のある遺伝子群を126遺伝子に限定し、Supervised clusteringを行うと正しく分類された。このシステムを用いて9症例(各群3症例)について前向きに解析したところ、全例で正しい群にクラスター化された。一方、従来の方法である免疫染色ではCK19は45症例中42症例でpositive(P)であり診断的価値は低い。CK7/20ではP/NはICC,N/PはCLMで特異性がある。しかしP/PおよびN/Nも45症例中16症例(37%)あり、これらの症例では免疫染色での鑑別は難しく、特にCRMとGLMとの鑑別は困難である場合が多かった。 結論:胆管細胞癌、大腸癌肝転移、胃癌肝転移はトランスクリプトーム解析により、鑑別ができる。
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