研究概要 |
98例の食道癌のHLA class I抗原と、NKG2DリガンドMICAの発現を検討し、癌組織中リンパ球浸潤との関係を解析した。その結果、癌細胞HLA class I発現は癌組織CD8^+T細胞浸潤と相関し、癌組織CD8^+T細胞とCD4^+T細胞の浸潤は良好な患者予後と相関した。一方、MICA発現はNK細胞、CD8^+T細胞浸潤と相関せず、NK細胞浸潤と患者予後にも相関を認めなかった。従ってCD8^+T細胞が食道癌に対する免疫監視に重要であり、HLA class I発現低下は食道癌の免疫監視回避機序の一つである事が示唆された(論文作成中)。 157例の肺癌において、CD4^+T細胞とCD8^+T細胞の両者が浸潤する症例は良好な予後を示した。また、進行期肺癌の癌精巣抗原MAGE-A4発現は患者予後と負の相関を示し、本抗原を標的とした癌免疫療法開発の必要性が示唆された(Int J Oncol,2006)。 ヒト骨肉腫細胞株由来cDNAライブラリーの骨肉腫患者血清によるスクリーニング(SEREX法)により、骨肉腫腫瘍抗原としてCLUAP1を同定した。CLUAP1は骨肉腫の他、肺癌、大腸癌、卵巣癌でも過剰発現していた(Int J Oncol,2007)。 癌胎児性抗原CEAに対する抗体とT細胞レセプターのキメラ分子遺伝子を導入したT細胞を作成し、自家大腸癌に対する有効な抗腫瘍効果を示した(Cancer Sci,2006)。 マウス腫瘍モデルを用い、抗原提示細胞とI型ヘルパーT細胞の相互作用の抗腫瘍効果における重要性(Cancer Res,2006)、トル様レセプターリガンドCpGを用いた腫瘍ワクチンにおけるI型インターフェロンの重要性(Int Immunol,2006)、樹状細胞の機能分化をビタミンD3誘導体が阻害すること(Cancer Sci,2006)を見出した。
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