研究概要 |
本研究では, インターロイキン10(IL-10)遺伝子をラット移植肺へ経気道的に導入し、拒絶反応抑制効果が得られるか否かにつき検討した. BNラットより左肺を摘出し, ヒトIL-10遺伝子を内包した遺伝子プラスミド(pCMVhlL-10), またはコントロールプラスミド(pCMVβ)をcationic liposomeを媒体として経気道的に遺伝子導入した. 遺伝子導入後, ドナー肺をMHC不適合のLewラットに同所性に移植した. 移植後6日目に移植肺を摘出し, 移植肺の拒絶反応のstage(0-IV)を組織学的に評価した. また, 拒絶反応に伴う急性炎症の病理学的パラメーター(リンパ球浸潤, 浮腫、肺胞内出血、壊死)を設定し, 各所見が切片全体に占める割合に基づき, それぞれの程度を0-4にスコアリングした. IL-10群(n=7)ならびにコントロール群(n=6)の拒絶反応のstageは, 3.1.0±0.4 vs. 3.8±0.4であり, IL-10群で拒絶反応の進行が有意に抑制されていた. 急性炎症のパラメーターのスコア(IL-10群vs.コントロール群)は,リンパ球浸潤 : 3.4±0.5 vs. 3.2±0.4, 浮腫 : 2.3±0.8 vs. 3.2±0.4, 肺胞内出血 : 0.3±0.5 vs. 2.2±0.8, 壊死 : 0.3±0.5 vs. 1.2±0.5であり、浮腫, 肺胞内出血, 壊死の程度がIL-10群において有意に軽減されていた. 本研究の結果から, Gationic liposomeを媒体とする移植肺へのIL-10遺伝子の経気道的子導入が, ラット移植肺急性拒絶反応を有意に抑制することが示された. また, 移植肺内のサイントカイン発現を定量RT-PCR法にて測定したところ, IL-10群でIL-2およびINF-αの発現が有意に抑制されていることが判明した.
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