研究概要 |
骨髄細胞移植後の心機能改善効果の作用機序は虚血心筋の血流改善作用、骨髄細胞から産生された液性因子の心筋保護作用、心筋remodelingの抑制作用、直接に機能的な心筋再生作用などによるものが考えられる。しかし、今までの研究報告ではほとんどが骨髄細胞移植後の臓器レベルでの分析に留まっており、細胞レベルでの作用機序の解明はまったく進んでいないのが現状である。本研究ではin vitroで単一心筋細胞レベルでの解析を行い、生体内の組織因子の影響を受けない液性因子による心機能改善効果の作用機序(paracrine mechanisms)を調べる。 Wister Ratより骨髄単核球細胞(BMC)を採取し、通常酸素(5% CO_2,95% air)と低酸素(1% O_2)下で24時間培養を行った。両培養上清のみを採取し、以下の実験に用いた。同Ratより成獣心筋細胞(CMC)を単離し、先に採取した上清とそれに対してBMCを培養していないcontrol mediumを用いて、72時間培養した。培養後、Tunnel法でapoptosisに陥った細胞を測定した。同様に48時間培養したCMCの電気刺激下でのCell、lengthおよびCa^<2+> transientを測定した。骨髄単核球細胞の培養上清中にはVEGF, bFGE PDGF, IGF-1,IL-1beta, TGF-betaなど様々な因子がELISAあるいはWestern blot法で検出された。Apoptosisに陥ったCMCは、control群で有意に高値であった。CMCのCell length, Ca^<2+> transientの測定では、通常酸素、低酸素群がcontrol群に比べて収縮能が良好であった。 骨髄細胞の培養上清では培養心筋細胞のapoptosisを有意に抑制し、心筋細胞の収縮機能を有意に温存することができた。今後はラット心筋梗塞モデルを用いて、骨髄細胞から産生される因子(培養上清)の心機能改善効果の有無を調べ、その作用機序を明らかにする。
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